酒田罫線法とローソク足の本質である酒田新値は、「
ローソク足と酒田新値」で記事にしました。しかし、実は酒田罫線法においては、酒田新値は道具のうちの一つでしかなく、そこに「線と線組み」と「型と売買法」を加えて「酒田罫線法」となります。今回は「
線と線組み」について取り上げたいと思います。
最初に、1本のローソク足そのものである「
線」です。書籍「
定本 酒田罫線法」では、線を13種類と14種類の計27種類に分類しています。「線」はあくまで1本のローソク足の動きをどう解釈するか、その1本が強かったか弱かったかを見るためのもので、売買のタイミングにするべきではないと私は認識しています。
下記に示す1から13までは、ほとんど実体は小さく、均衡を保っていたもの、と解釈します。下髭は、「少なくとも弱くはなかった」と解釈できることから、次のローソク足は陽線となる確率が高いです。そして、陽線になったのならば「上昇暗示」と見てよいでしょう(書籍でこの箇所は「陽線」ではなく「寄り付きが大ひけよりも高くなる」と表現していましたが、FXでは窓が開くのは希なのであえて「陽線」としました)。また、逆に「少なくとも弱くはなかった」のに、次のローソク足が陰線の場合、それは「おかしい」のであって、「下落暗示」なのではないか、と考えることができます。2本のローソク足の読み方については「線組み」で具体的に述べます。
1.
値が一つのもの。寄り引け同時。売り勢力と買い勢力が
均衡を保っている、もしくは、取引そのものがなかったと見ることができます。これはメジャーな通貨ペアではほぼ出ない線だと思います。
2.
売り勢力と買い勢力が
均衡を保っている、と見ることができます。
3.
寄り引け同時としては均衡を保っているといえるが、この期間は戻ったのだから、「
少なくとも弱くはなかった」と見ることができます。
4.
上髭の寄り引け同時で、3の下髭と反対で「
少なくとも強くはなかった」ことを示しています。
5.
下髭の寄り引け同時ではありますが、上髭がありません。3よりも一方的な動きであり、
「弱くない」度合いが3よりもほんの少し強いと言えます。
6.
5と同じように、
「強くない」度合いが4よりもほんの少し強いと言えます。
7.
なんだかよくわからないけど、
とにかく均衡を保っている。
8.
ほんの数pipsの実体と数pipsの髭。「最終的にやや買いが強かった、もしくは、売りが弱まった、だから数pipsの陽線になった」と読みますが、これは偶然で、陽線にこだわるのは間違いだとしています。
9.
数pipsの陰線。これも8と同じで偶然陰線になったとみたほうがよい、としています。8も9も、2と同じように「
均衡を保っている」と解釈します。
10.
8、9で説明しましたが、短いローソク足は十字線と同じ解釈をしていいとしています。なので、この線は5と同じで「
弱くはなかった」と解釈できます。
11.
6と同じく「
強くはなかった」と解釈します。
12.
長い下髭の陰線。「
弱くはなかった」と解釈する。弱くない度合いが少し強い。この線がもし陽線だった場合、「戻った」ということから「
強かった」と解釈します。
13.
長い上髭の陰線。「押した」という印象と、「陰線」であることから、「
弱かった」と解釈します。
ここまで、均衡を表すローソク足について述べてきました。ローソク足で長い髭が出ると「次は反対方向へ行くかも」と予想をしたくなるところですが、ローソク足はあくまでチャート上で起こった事実を受け止めるためのものです。なので、
戻った、ならば、強かった
押した、ならば、弱かった
というように考えて
予想はしない方がよいとしています。
14.
ごく一般的な陽線。「強かった」ことを示します。
15.
14と同じ陽線ですが、14に比べると、大引けでだれてしまったという印象が強くなります。
16.
14とは逆で「弱かった」ことを示します。
17.
陰線としては、16の上髭が一般的で、大引けで戻る17の陰線は16と比較して戻る可能性を含んでいる、といえます。
18.
上下に髭があり、陽線が比較的短い、気迷い陽線。極端に言えば8や9のごく短い陽線(陰線)と、意味(内容)はそう変わらないと言えます。
19.
上下に髭があり、陰線の比較的短いもの。18と内容は同じです。
20.
下髭の長い陽線。同じ髭でもこのようにある程度実体があると「比較的強かった」と解釈することができます。
21.
上髭の長い陰線。20と同じように「比較的弱かった」と解釈します。上髭が長いということは、弱かったのであるから、実体は陰線になった方が自然です。
22.
上下に髭のない陽線。
23.
上下に髭のない陰線。22、23は「次第高(安)」を示した動きであり、
おとなしい強さ(弱さ)を見せた期間、と見る事ができます。
24.
長大陽線。22との客観的な区別はないようです。「
いっそう強かった」と解釈できます。
25.
上下に小さい髭のある長い陽線。これは25とほとんど同じ意味を持ちます。
26.
長大陰線。24とは逆に「いっそう弱かった」と解釈します。
27.
これも26とほとんど同じ意味を持ちます。
次に、ローソク足2本の「
線組み」です。書籍では、「線組み」を下記のようにまとめています。
- 線組みとは、二本の日足の組み合わせのことである
- 線組みは、型に類似し、また同じような外見をもっているが、目的がちがうものである
- 線組みの目的は、起こり得るもの、起こり得ないもの、を目で知るためである
- だから、目で直接に見て判断する練習あるいは感覚的な理解のためのものである
- また、目で見て「なれる」ためのものであるから、理解とはいえ理屈っぽい解説はなるべく避けるべきものである
- 線組みを「見る」ための基礎知識は必要ない
- できるだけ多くの種類があったほうがよい
また、「線組み」は二本のローソク足の組み合わせであり「型」ではなく、「型」の基本となるものでもないとも言っています。ここでいう「型」というのは、酒田五法などで出てくる三山などや、書籍の後半で出てくる「買い線の型」や「売り線の型」のことを指しているものと私は認識しています。「型」というのは「買い」「売り」のシグナルに直結するものなのですが、「線組み」の目的は
「値動きとして当然と考えられる組み方、不自然な有り得べかざる組み方を知る」ことだとしています。下記に、書籍「定本酒田罫線法」のP. 99 図14 線組みの例と同じ図を示します。
1-9は同じ長さの2本のローソク足を位置を変えて並べたものです。書籍は株相場や商品先物相場など、時間的に不連続な相場のローソク足を想定しているせいか、FXでは全くと言っていい程おこらないローソク足の形もありますが、本質的なことは変わらないと思います。
まずは「
肯定の線組み」からです。AからFまでの
一番左側は、前日の陽線の大引けよりも高く寄り付き、多少の抵抗があったが、その日の大引けは前日の大引けを上回っており、「結局は高かった」という2本のローソク足の動きです。A、B、D、Eのように、陽線もしくは陰線でも長くないときは、まだ「下がった」という感じより「上がっている」という感じが優先しており「上げ途上の一服」と見る事ができます。CやFは他の線組み比較して「上げの力が抵抗にぶつかった」ような感じがします。長い陰線は位置によらずに「
感じが悪い」と言えます。いずれの線組みも、上げ途上に起こり得る日足の組み方と言えます。
次に「
否定の線組み」です。A列の1-9を見比べてみます。A列は、陽線の次に多少の波乱があって、結局陰線に終わった、という状況と読む事ができます。これらは、おおまかに
- 陽線より高かった。
- 食い込んだ。
- 下寄りした。
- 下抜けした。
と分ける事ができます。このとき、陽線の大引けが陰線の寄り付きよりも上にあると「
感じが悪い」と言えます。
この「感じ」は、「肯定の線組み」における長い陰線の「感じが悪い」と少し違います。1本目の陽線というのは、「強かったことを示すもの」であり、「強かった。次はどうだろう。少なくとも今が陽線であったのだから、次は少しでも高いだろう。」という「感じ」から、次の線がより下にあると「あれっ、おかしいな」ということになって、「感じが悪く」なってしまうのです。つまり、「起こり得ない事が起きた」のであり、起こり得ない確率はA列の左から右にいくに従って大きくなります。
上記の文章は、書籍をまとめたものですが、CやFに示す長い陰線そのものの「
感じが悪い」とAの右側の線組みにおける陰線の「
感じが悪い」の違いを分かっていただけたでしょうか。この違いは、陰線自体の感じの悪さというより、1本前の陽線に対する不信感が原因であると言えます。
上記の例だとFXに通用するかどうかはわからないので、実際にチャートで検証したものの一部を載せます。
2013年日本時間の2月6日17:00~2月7日4:00のユーロドル1時間足チャートを下記に示します。一番左の陰線が長い髭をつけて終わりました。「線」で解説した型に当てはめると、12が近いと思います。この線は「
少なくとも弱くはなかった」であり、髭が長いことから「
弱くない度合いが強い」と読むことが出来ます。よって、次の線は陽線になった場合が「肯定の線組み」で、陰線になったら「否定の線組み」と考えることができます。チャートでは陰線で「
否定の線組み」となり、もしかしたら下げるかもしれないから注意しようと心構えをすることができます。ここで、もしかしたら下げるかもしれないからショートポジションを持つ、と行動しないところがポイントです。その後、さらに2本後のローソク足で長大陰線が出ました。しかし、その後、長大陽線で戻して結局レンジとなってしまいました。線組みをエントリーのタイミングに使うべきではないことがよくわかるチャートです。
2013年日本時間の2月8日14:00~2月9日3:00のドル円1時間足チャートを下記に示します。この日は
「俺が押し目作ってる間何してたんだお前ら?」な円安トレンド : 市況かぶ全力2階建にあるように、麻生さんの発言でドル円が大幅に下落した日です。しかし、今までドル円は下げればV字で戻していたせいか、市場も突然の下落に強力なドル買いで反応して50pips近い長い下髭を持つ陽線を作ります。「線」で解説した型に当てはめると、12を陽線にしたもの、つまり「
強かった」と解釈することができます。次の線が陽線なら、この下髭を肯定して今までどおりにV字、陰線なら下髭否定で下にいく可能性が高い、と判断します。私はドル円はトレードをしていませんでしたが、していたとしたらこの部分の前ですでに売りのシグナルは出ているので、この場面では強力なV字回復を警戒してポジションを閉じるかどうかの判断をしていたと思います。結果的に次に陰線が出て下髭を否定したので少しずつ下落していきました。
以上、酒田罫線法における「線と線組み」について解説してきました。「木を見て森を見ず」ということわざがありますが、FXにおいても木ばかりを見て森(酒田罫線法は林ですが)を見ないでトレードをするべきではないと私は思います。しかし、本当に木を見れているのでしょうか(自戒)。木すら見れていないのではないでしょうか(自戒)。「線と線組み」は、その木を見る方法のうちの一つです。ローソク足を1本1本丁寧に読むことで、実際の売買の精度を上げることができると私は思っています。例えば、ある局面でテクニカルではエントリーポイントだけど否定の線組みが続く、となった場合、ポジションを持つ前に立ち止まってよく考える事ができます。
最後に、まとめとしてローソク足の「線と線組み」の本質を下記に示します。
「ローソク足の線と線組みは、二本目の線の感じ、一本目の線に対する不信の感じ、の2つの感じを直感的に判断するものである。」
「線」で最新のローソク足の値動きを感じ取り、「線組み」で最新のものとその一本前のローソク足の値動きの不信を感じ取り、売買の判断につなげることが主な利用方法になります。
上記に、「直感的に」という記述が登場しました。直感的に判断するにはどうしたら良いでしょうか。これは線と線組みを一朝一夕で覚えただけではできるものではないと思います。実際の相場や検証でローソク足を一本一本丁寧に読んで積み重ねていく他ないと思っています。私が尊敬する凄腕トレーダーうちの一人であるこーじさんも
と言っています。少しずつ、着実に積み重ねて、直感的に判断できるようになりたいと思います。